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2017 ちば経済生産性シンポジウムが開催されました。

本年で5回目となる「2017 ちば経済生産性シンポジウム」が10月17日に千葉市内で開催されました。

今回のテーマは「働き方改革と千葉経済 ~改革の成果を全ての主体が享受するために~」です。

当日は、産官労金の多様な視点から事例や考え方を紹介いただきました。

当日の主な内容は以下の通りです。

■青柳俊一・千葉県生産性本部会長(千葉興業銀行頭取)の主催者あいさつに続き、水野創・ちばぎん総合研究所取締役社長が県内企業の働き方改革の実施状況について最近のアンケート結果を示しながら説明を行った。水野氏は、「全体として大企業が先行しており、中小企業の3分の1は必要性は意識しているが、取り組む余裕がないと回答している」と総括した。また項目別では規模に関わらず、時間外労働の削減、有給休暇取得率の向上、仕事の進め方の見直しへの関心が極めて高いという特徴があることも報告した。

■パネリスト講演
次いで、江濵政江・イオンリテール人事部ダイバーシティ推進担当、吉田和彦・千葉県商工労働部長、津崎暁洋・キッコーマン労働組合中央執行委員長、鈴木光・連合千葉会長(千葉県生産性本部副会長)、青柳俊一氏の5人のパネリストが講演を行った。

江濵氏は店舗勤務管理職のテレワーク定着の取り組みを説明した。同社は導入にあたり、制度概要、テレワーク環境、導入における懸念点を整理し、店長業務項目を調査してテレワーク可能な業務を洗い出したという。しかし、制度対象者、特に管理職の納得が得られなかったため、障がい者の在宅勤務、パイロット店舗での代行者育成取組から開始したと江濵氏は説明した。また、代行者育成により店長の長期休日取得が可能になったほか、代行者の上位職位登用も進み、「気が付くと女性管理職比率60%を達成していた」とも述べた。

次いで登壇した津崎氏は、キッコーマンにおける労使による「働き方改革」について説明した。同社の働き方改革では時間単位年休、計画年休、在宅勤務、勤配偶者帯同休職制度(配偶者が転勤した際に休職できる制度)の導入が成果として上げられた。特に時間単位年休については、経営側はラインコントロールが難しいため、「製造現場への導入は困難である」とする考えを示し続けてきたが、労組が現場の意見を拾い、「半休がコントロールできているので、時間単位も可能」として経営側と議論したことを話した。

鈴木氏は、連合が7月に発表した「三六協定に関する調査2017」をベースに、「過労自殺と過労死を何とかして止めたい」ことを強調した。同調査で
は、三六協定の認知率は5割半ば、20歳代では半数を下回る結果になっていること、また残業を減らすための取り組みについて「何も行われていない」とする回答が4割半ば、サービス業では6割に達していることが明らかになっている。鈴木氏はこうした点を踏まえ、協定の認知度向上をはかること、長
時間労働の是正の必要性を訴えた。

吉田氏は働き方改革について整理した上で、目指すべき方向性を「女性・高齢者など誰もが働きやすい環境づくり」「生産性の向上」「企業の人材確保
」の三つにまとめた。また千葉県の労働の現状について、25~44歳の女性の有業率は全国平均より低く、週の就業時間60時間以上の労働者の割合は高く、1日当たりの通勤等の時間は長いことを指摘した。県が2~3月に長時間労働が多い業種の県内企業10社を訪問し、聞き取り調査を実施した結果については、全体的傾向として労働時間削減・生産性向上への問題意識はあるものの、従業員の意識と業績面との両立に課題があることを報告した。

青柳氏は働き方改革を進めるうえでの留意点について、現場のリアルな情報を持っている労働組合、従業員と経営が十分なコミュニケーションを図り、協働して進めること、今までの働き方の常識にとらわれない、新しく柔軟な発想や取り組みに挑戦すること、成果の分配は改革に携わる全ての当事者へ適切になされるべきものであり、生産性向上の取り組みを続けていく上で不可欠なことという認識を持つこと、人間尊重の精神の4点を強調した。

■パネル討議
パネル討議では、人口増について千葉は有利ではないかとの質問に対し、江濵氏は「いままでの働き方、採用の仕方では人口増は無理だと思う。人口構成比に合わせて従業員の多様性も変えるべきではないか」と持論を述べた。また、分配について、鈴木氏は「千葉県の最低賃金は26円アップし868円となったがまだまだ定着には時間がかかっており、周知徹底されていないと思う」と指摘した。最後に青柳会長はあいさつのなかで「働き方の改革を通して、企業サイドにとっても働く方々にとっても、モチベーションを維持して満足度を上げるような仕組みや仕掛けが必要だ」と述べた。